白い薔薇の淵まで

自分は燃え上がる恋愛というものをしたことがなく、というかそもそも恋愛をしたことがない。 『白い薔薇の淵まで』はまさに身を焦がす恋愛の話だが、本屋で見かけたときは恋愛の話なんて刺さらないだろうと見逃した。 後で「究極の恋愛小説」と太鼓判が押されているのを耳にして、そこまで言うならと注文した。

そうして読んでみると確かに「究極」というふれこみは間違いではなかった。 人格が破綻している小説家の塁と、それにひかれたクーチというOLの、どう考えても破滅にしか向かわない恋愛は、胸が苦しくなるものだった。 互いに嫉妬しあい、求めあうその姿は、傍から見れば醜いかもしれない。 しかし本人たちにとっては、それはとても美しい記憶となって、互いを縛り上げる。 多分恋愛の程度にも境界があると思うのだが、二人の恋愛は互いを死に至らしめるギリギリの淵を歩いていたと感じる。 終盤には、塁は淵の向こう側へと行ってしまった。 そして最後のページで、クーチも白い薔薇の淵に向かう。

読み終わって、この二人にはうらやましさを感じた。 こんなに互いを求めあえるような人物には、おそらく一生かけても出会うことができないと思う。 恋焦がれる相手を見つけたくなる本だった。