20260131

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久しぶりに小説を読んだ。 日々飽きずにSNSから脳に対して泥水のごとき文章を流し込んでいるが、その汚泥の中で西村賢太氏の文章が紹介されていた。 その文章が、おっ、と心に引っかかるものがあったので、氏の代表作の『苦役列車』を買って読み進めた。

主人公は、性格が悪く、性根がねじ曲がって臆病で、体臭が臭く、中卒で、日雇いの人足で、その振る舞いや人付き合いの方法も失礼でみっともなく、好感など持てない人間なのだが、なぜだか興味が尽きずに小説を最後まで読み進めることができた。

その理由を考えると、この主人公に存在する欠点は、かなりの人間が持つ欠点の最大公約数的になっており、ふわっとした言い方をすると、「誰でもどこかしら持っている欠点」を煮詰めたようなもので、それに人は引き寄せられるのだと、そう考える。 貫多があまりにもみっともないので同情はできないが、作中で描かれる貫多の情けない心の動きが一種の共感性羞恥のようなものを感じさせ、しかしそれに少しだけ共感できたりもする。

また文章のリズムが良く、特に友人日下部とその彼女が貫多の前でじゃれ合うのを貫多が蚊帳の外になるシーンなど、現実の会話でもこういうのあるよなーと思いながら読んでいた。 三人称と一人称の中間みたいな、一寸引いた視点での一定のテンションで記述されると、貫多の愚行がより愚かしいように感じられた。

同情できないけど共感できる、みたいな主人公は自分の中ではなかなか珍しく、西村賢太は自分の中で特異な作家だと感じた。

良い読書体験だった。